大同生命 企業防衛情報 aim39号
「企業・編集」 TKC事業部

中井亜紀の
  ツイン・インタビュー

関与先企業の存続を願いリスク対象からビジネスチャンスの拡大まで献身的に取り組む

近田会計事務所
近田雄一氏&工藤高歩氏vs中井亜紀
 
◇業務品質の向上を目指して
中井 こちら八戸にうかがうのは初めてのことで、ずいぶん前から楽しみにしていました。八戸といえばイカの水揚げが日本一ですよね。(笑い)
近田 東北新幹線が昨年の十二月に八戸まで延びたので、東京からは乗り換えなしで三時間ほど。ずいぶん近くなりました。
中井 はい、びっくりしました。(笑い)びっくりしたといえば、こちらの事務所は、KFSに力を入れておられ、翌月巡回監査率95%との事ですが、毎月約六百社の関与先を回監査されることは、所員さんが大勢いらっしやつても、結構大変ではないですか?
近田 私の事務所には八つの課があります。ただし、それぞれの課の課長は関与先を持っていません。
リーダーとして課員の業務の管理やアドバイスに徹しているのです。つまり、一つひとつの課が、小さな会計事務所といったところでしょうか。
中井 優秀なり−夕−を育て、課を増設すれば、関与先が増えても、常に質の高いサービスが提供できるというわけですね。
近田 おっしゃるとおりです。
中井 ほかにも、一昨年には北東北の会計事務所で初めて「IS09001:2000」(品質マネジメントシステム規格)の認証を取得されています。ISOの認証を取得するには、みなさんとても苦労されるようですが、先生の事務所ではいかがでしたか?
近田 最初は難しいと覚悟していたのです。ところが、取り組んでみると思ったほどではなかったのです。(笑い)というのは、何か新しいことを始めるのではなく、日頃から続けてきた業務の進め方が規格に合っていたということですね。
中井 どれくらいの期間で取得されたのですか?
近田 六カ月問です。
中井 通常は一年ほどかかるといわれていますが、ずいぶん短期間で取られたのですね。常に品質の高いサービスを心がけておられる成果の現われですね。
近田 ありがとうございます。
中井 ISOの取得については、対外的なことだけでなく、社内的にもいろいろなメリットがあると思いますが、いかがですか?
近田 そのとおりですね。それまでは個人個人で進めていた業務を一つの流れとして明確にすることにより、所員たちは「仕事がやりやすくなった」と言っています。

◇早期勉強会で企業防衛の知恵を修得
中井 先生がTKCに入会されたのは、どういった理由からですか?
近田 それは「コンピュータ会計がやりたい!」ということですね。しかし、すぐにTKCに入会したわけではないんですよ。いろいろと資料やデータを取り寄せて、試した結果、TKCが最も信頼できるということがわかり、入ることに決めました。
中井 入会されて、まず、感じられたことは?
近田 創設者、飯塚毅先生の偉大さですね。私が入会した昭和五十二年ごろにおっしゃっていたことが、現在でもそのまま通用しますからね。
中井 そういえば、先頃、飯塚名誉会長の「企業防衛制度導入の8原則」を基本にした「企業防衛行動指針」が発表されました。こちらの事務所では、全ての項目に対して以前から積極的に取り組んでおられますが、保険指導を始めようと思われたきっかけは?
近田 TKCに入会したころは、それほど積極的ではなかったのです。それが、TKC企業防衛制度推進委員会が、積極的に活動をはじめられ、ある時、青森市で保険指導の必要性についての研修を受けたのです。そこで「関与先に最適な保険をアドバイスすることは会計人の使命である」ということを実感し、帰りには参加した仲間と「みんなでやろう!」と誓い合っていました。
中井 それから前向きに取り組まれたのですね。
近田 はい。私どもでは、所員全員に生命保険の資格を取ってもらい、保険指導するようにしています。
中井 何人くらい取得されているのですか? 
近田 一般課程の資格は全員、専門課程についてもほぼ全員ですね。
中井 それは徹底されていますね。工藤さんも資格をお持ちなのですか?
近田 はい。資格取得には、手当も出るんですよ。
中井 それは励みになりますね。でも、勉強する時間がなかなか取れないのでは?
近田 早朝に勉強していることが多いですね。というのは、私どもの事務所では、朝六時の早朝勉強会に参加することが入所の条件なんです。私は勉強をする人、努力をする人が好きなものですから。(笑い)
中井 朝六時ですか? みなさんお偉いですね。

ロープレ研修で付保率を伸ばす
中井 工藤さんは、リスクマネジメント委員会の委員長でいらっしゃいますが、この委員会のメンバーと活動内容を教えていただけますか?
工藤 一つの課から一人ずつ委員として参加しています。
大同生命さんにも参加していただいております。
委員会の仕事は保険指導しやすい環境を整えることです。委員会は毎月開催するのですが、そこでは前月の保険指導推進状況を確認し今後の方針やアイデアを出し合い、提案としてまとめます。事務所内推進会議のようなものでしょうか。これを委員がそれぞれの課にフィードバックします。課内でも具体的に関与先についての推進状況を確認し、指導方法を検討していきます。また、所長と課長たちによる実績検討会にも委員会から提案することもあり全員参加の朝礼でも週に1回委員会報告をしています。
近田 委員会はほかにもあって、最近では「挨拶清掃委員会」をつくりました。
中井 挨拶と掃除は基本的なことですからね。ところで、こちらの事務所では、保険指導のための体制づくりのために他にも工夫されている事があるとうかがっています。
工藤 ISO取得への取り組みの一環として、リスクマネジメント連絡表をつくりました。これは、担当者が関与先に保険を指導するときなど、保険内容や指導の方針を書類にして、課長とリスクマネジメント委員会に提出します。そこでチェックを受け、承認されて初めて関与先へ提案できるというしくみです。
中井 関与先から解約の申し出があったときも連絡表にするのですか?
工藤 そうですね。そのため、担当者一人の判断で解約の受付けをすることはありませんね。
中井 解約の申し出があったときは、どのような方法で対応されているのでしょう?
近田 まず、申し出理由を確認し、標準保障額を確認した上で保障額はそのままにして、掛け金の負担が少ないものに切り替えます。それでも苦しい場合は保障額を減らしますが、その前には必ず、生保から損保まで、会社から個人まで、保険証券を回収するなどして、契約内容を確認して見直します。
工藤 私どもでは、標準保障額に基づいて指導しているので、経営者の方もどれくらいの保障が必要なのかをご存じです。そのため、やむを得ず保障額を下げることはあっても、解約までは至りませんね。
中井 標準保障額は必ず提示されるのですか?
工藤 はい。すべての関与先に提示しています。担当者は一人云口ずつパソコンを持っていますので、TKC企業防衛データベースを使って標準保障額を算定します。
中井 どのようなタイミンクで提案されるのでしょう。
工藤 決算検討会時と継続MAS提案時、そして、私どもでは融資の申し込みをお手伝いしているので、そのときにも算定し、提示します。とくに決算時は、決算書類に標準保障額算定書を添付することを基本としています。そのため、これがない決算書には課長が押印しないことになっています。
中井 徹底されているのですね。では、関与先が保険に入っていらっしやる割合はどれくらいですか?
近田 法人の付保率は32%です。事務所の基本方針は『関与先を人的リスクから守る為に全ての関与先の「標準保障額」を算定し指導する』ですから、まずは50%まで伸ばしたいと思っています。そのために、現在は研修に力を入れています。
工藤 これまでも月に二回は研修を続けてきました。はっきりいって私たちには知識はあると思います。しかし、関与先に「保険に入る必要はないよ」と言われたときに、保険加入の重要性を納得いただけるように説明することが不得意で、関与先を思う気持ちもなかなか理解してもらえない状況です。そこで、今後はロールプレインクなど実践的な研修に力を入れていきたいと思っています。

関与先を力づけ、八戸を盛り立てる
中井 近田先生は、TKC東北会の「創業・経営革新支援委員会」の副委員長として、経営支援にも積極的に取り組んでいらっしやるとうかがっています。
近田 ええ。事務所本体で行っているのではないのですが、パソコン教室の会社があり、そちらでインターネットのホームページを運営しています。「おたすけ横T」というサイトで、地域のお店や病院、施設などを紹介しています。関与先の売上げを伸ばすためのお手伝いですね。このサイトも別の業者が始めたものですが、運営が難しいということでおたすけしています。
中井 成果はありましたか?
近田 はい。ある塗装店では「八戸に事務所を開設するので塗装を」という県外の方から注文を受けましたし、また、三戸特産の田子午を扱う精肉店では、埼玉県の精肉店から定期的な注文を受けるようになりました。
中井 掲載料をいっさいとらずに紹介されているんですね。また、お得なクーポン券がついていたりとシカケもいろいろですね。こんど、八戸へ来るときは、事前にチェックさせていただきます。(笑い)
近田 ぜひ、そうしてください。(笑い)
中井 青森県支部では、国民生活金融公庫との連携を強化されており、先生の事務所でも、関与先が国民生活金融公庫の融資を受けられるようお手伝いされたり、倒産寸前の企業に再建のアドバイスをされたりと、ずいぶん地域企業のために奔走されていますが。
近田 「もうタメだ」という会社でも、われわれが見るといくらでも打つ手はあるのです。そして痛感するのはそういう会社ほど保険が必要だということです。
中井 その熱意はどこから来るのでしょう?
近田 実は、私の先祖というのが、ことごとく事業に失敗していましてね。だから、そういう失敗しそうな人を救ういまの仕事こそ、私の天職だと思っているのです。
中井 すばらしい天職ですね。本日は貴重なお話をありがとうございました。


関与先を力づけ、八戸を盛り立てる

インタビューを終えて
近田先生のご趣味はウオーキング。毎日最低1万歩は歩かれるそうです。また、所員の方も全員万歩計を持っていらっしゃるとか。 早朝勉強会といい、健康的な事務所という印象を持ちました。また、先生は「いいと思ったことはすぐやる」という方で、私の意見も熱心に問いてくださり、「やってみます」とその場で始められそうな勢い。その実行力がすべての源なのだと思いました。

中井亜希(なかいあき)
キャスター/●慶應義塾大学法学部卒業●三菱銀行に総合職として入社し、外国為替を担当する。その後、NHKに 入局、アナウンサーとしての道を歩みはじめ、フリーになってからはTBS「おはようクジラ」の司会で活躍。 現在はBS−i「榊原・嶌のグローバルナビ」の司会などを務める。