| TKC 2005年3月号 No.386 |
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近田会計事務所の経営革新実践メソッド −既に経営革新法の承認は53件を超えた!− |
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◆TKC福島県支部生涯研修「経営革新特別研修会」より
◆と き:平成16年11月24日(水)
◆ところ:大同生命郡山ビル |
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青森県八戸市の近田会計事務所の経営革新法(略称)の承認件数は53件にのぽる(平成17年1月末現在)。1月の全国会理事会では、承認企業輩出全国一位事務所として表彰された。人材育成を重視する近田雄一会員の指導のもと、所内には上級と中級実務試験合格者がそれぞれ18名と27名いる。また、創業・経営革新アドバイザーは38名もおり、ポイント制の導入など承認支援活動を奨励している。近田会員は、東北六県で「経営革新特別研修会」の講師を務め、そのノウハウを公開した。
他に給与計算、販売管理、顧客管理等の導入の支援もしています。
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こんだ・ゆういち◎昭和16年生まれ。35年国税庁税務講習所仙台支所入所。その後、鶴見、下谷、目黒、川崎北、横浜南、十和田の各税務署勤務の傍ら、41年中央大学法学部卒業。48年近田哲雄税理士事務所副所長となる。52年TKC入会。平成4年近田会計事務所所長に就任。12年青森県倫理法入会を設立し、会長となる。
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目 次 |
1.まずはセミナーに足を運んでもらう
2.ノウハウより人材教育が大切
3.「いける!」と感じたらすぐ相談を
4.ポイント制でスタッフの動機づけ
5.全関与先を経営革新で生き残らせたい
近田会計では、平成14年11月に経営革新法の承認支援第一号を出しました。14年は2件、15年は11件、16年は27件と推移し、これまでに40件の承認支援を行っています。
青森県の14年度の承認件数は29件で、ご当地の福島県のほうが成績は上でしたが、16年度(11月末)になると、青森県は144件(うちTKC青森県支部49件)で、福島県は90件(うちTKC福島県支部12件)となっています。青森県支部の承認支援件数の大半は近田会計のカウントですから、今日お越しの先生方一人ひとりがその気になれば、福島県支部の目標数値はすぐクリアできると思います。
これまでわが事務所では、第一弾の「TKC経営革新セミナー」を七回開催しました。一回目はパイロットユーザ開催で、その後は所内にある6つの監査課ごとに企画を変えて開催し、合計107名の参加者を得ました。第二弾の「TKC経営革新セミナー2004」も課ごとに6回開催する予定です。「経営革新に関心がある」「いや、まるでない」、どちらの関与先でも構いません。とにかく社長に足を運んでもらい、経常革新の意識づけをすることが大切です。セミナーには関与先以外の社長も参加されます。各事務所でセミナーをできるだけ多くこなし、一人でも多くの経営者に経営革新の必要性をアピールすることが承認支援の第一歩だと考えています。
今日お話しするのは、どうして近田会計の承認支援件数が増えたのかということです。ひと言でいえば、職員の人材育成です。承認支援はノウハウも大切ですが、その前提条件として、人材育成ができていなくてはなりません。良いスタッフが育っていれば、承認支援はいくらでもできると考えています。
会計事務所の仕事は広範な知識を必要とします。税法はもちろんのこと会計全般の知識、システムや経営助言も学ばねばなりません。
そこで近田会計では早朝勉強会を行っています。毎朝職員は六時半までに事務所に来て勉強しています。ただしこの勉強会は強制ではありません。あくまでも奨励です。勉強は強制するとなかなか捗らないものです。それと少しばかりですが早朝勉強手当を支給し、勉強の動機づけをしています。
先程、承認支援の事例を発表した第五課の松浦健児君だと、TKC上級実務、生保普通、損保普通、アドバイザーの資格を持っています。近田会計全体を眺めると、税理士2名を筆頭に、上級実務18名、中級実務27名、生保普通48名、損保特級一名、損保上級9名、損保普通40名、AFP3名、そしてアドバイザーは38名います。また、創造経営大学校への入学も奨励し、これまでに8名が卒業しています。
『人を動かす人になれ!』(三笠書房)という本があります。精密小型モーター製造企業の日本電産社長の永守重信さんが書いた本です。その中に「すぐやる 必らずやる 出来るまでやる」という言葉が紹介されています。私はそれを拡大して、事務所の壁に貼っています。その理由は、所長が指示を出しても職員がすぐ実行しないことがありまが「所長が指示した時点ですぐ取り組まなければならない仕事だ」ということを職員に自覚してほしいからです。経営革新支援も同じです。まず取りかかることです。やる前に難しいことは考えない。とにかくやってみることが大切です。
京セラの稲盛和夫名誉会長は、「人生・仕事の結果=能力×熱意×考え方」と定義しています。能力や熱意はそれぞれゼロ点からプラス100点まであるが、考え方にはマイナス100点からプラス100点まであり、それらを掛け合わせた積が、人生・仕事の結果となつて反映されるというのです。プラスの考え方とは 「善意・思いやり・真面目・正直・謙虚、努力・感謝等」、マイナスの考え方とは「不真面目・嘘つき・倣慢・怠け者・利己的・強欲・不平不満等」。いくら能力や熱意が秀でていても、マイナスの考え方では良い結果は得られません。
では、プラスの考え方をどのようにして養うべきなのでしょう。倫理法入会をご存じですか?
倫理法人会では、心をベースにした経営による経営理念の確立や自己革新による企業の活性化を目的とし、毎週一回、経営者が講師となり、貴重な体験談や倫理経営を勉強する「経営者モーニングセミナー」を開催しています。私はこのセミナーに職員全員が参加するよう呼びかけ、参加者には特別手当を支給しています。モーニングセミナーでは全国の優秀な経営者の話を聞けるので、職員が関与先の社長と話すときにとても役に立ちます。いろいろな経営者の体験談を開いているうちに、関与先の目線に立って経営の話ができるようなります。経営革新支援のコツも、経営者と同じ目線でコミュニケーションを図ることにあります。

こんな承認事例がありました。ある勉強会で、携帯電話の販売会社の社長と知り合いになりました。その社長は「新店舗を作ろうとしているのですが資金が足りません。費用は5000万円必要です」。「経営革新法をご存じですか?」。社長は知りませんでした。それもその筈、PR不足で経営革新法の存在をまだ多くの経営者は知らないでいます。さっそく法律の概要を説明したところ、承認支援を近田会計が引き受けることになりました。ほどなく承認申請は審査会を通過し、政府系金融機関から5000万円の低利融資が得られました。しかも携帯電話メーカーからは店舗新築に伴う助成措置も受けられたそうです。気を良くされた社長は「近田会計に関与全体をお願いしたい」と相談に来られました。
経営革新法の承認支援をしても、事務所にそれほどメリットがないと考えておられる先生方も多いと思います。しかし実際は「経営革新」ができる会計事務所にこそ、お客様のニーズが集まってくるのです。
先生方が承認申請を行うに際して、不安を感じられるのは、やはり承認申請に係る手続き面ではないでしょうか。そこで青森県の審査会の様子を紹介します。司会は県商工政策課長が務め、審査委員は、行政、学界、中小企業支援センター、政府系金融機関等の各担当者9名で構成され、申請側は関与先企業の社長、所長の私、担当課長、巡回監査担当者の4名で臨みます。経営革新計画の発表に10分、質問に10分、審査も含めても30分もあれば全部終わります。質問といっても計画の内容を確認する程度です。つまり審査の前段階で経営革新計画をきちんと詰めておけば、計画が受理された時点で審査会はほぼ通過してしまうという印象です。
計画の内容は、設備投資=全部「経営革新」とお考えください。設備投資の着想こそが「経営革新」に繋がるキーワードなのです。あとは社長と巡回監査担当者が一緒になり、継続MASを活用して計画の詳細を練ればいいのです。
公的機関に計画の内容や承認の可能性を相談に行くと、本当にまじめな受け答えをしてくれますが、そのことがかえって「経営革新」を難解に捉えさせてしまうのかもしれません。中小企業の経営面に密着している税理士としては、余り難しく考えず「これはいける!」と思ったら、すぐ県の窓口に打診してみることです。最近の承認事例でも、個人のときは申請してもだめだった取り組みが、法人成りしただけで申請が受理されたケースもあるくらいです。
経営革新法の承認企業には、次の各種支援措置が講じられます。
1.中小公庫等による低利融資制度
2.中小企業信用保険法の特例
3.中小企業経営革新支援対策費補助金等
4.税制措置(設備投資減税、欠損金の繰戻還付)
5.新規・成長分野雇用創出特別奨励金
6.「雇用対策特例法」の特例措置
7.中小企業投資育成株式会社の特例
8.新事業開拓促進出資事業
9.高度化融資制度
10.「小規模企業者等設備導入資金助成法」の特例措置
11.研究開発型中小企業に対する特許等の減免措置
承認を受けると、政府系金融機関から5000万円単位の低利融資が、10年〜15年の長期固定金利で受けられるのです。しかも承認によって民間金融機関の評価もグンと上がるので、新規融資や返済条件の緩和等にも有利に働きます。
社会的ステータスもあります。ある関与先は承認を得たことで、『デーリー東北』(平成16年8月25日)に紹介されました。「鋳鉄製パネル枠『フレコッド』。低コスト、環境にも配慮」との小見出しがでました。一企業の取り組みが宣伝費も払わずに地方紙に紹介されるのです。この相乗効果は図り知れません。ISO取得では取得費用の負担が必要ですが、経営革新法だと承認取得の費用はほとんどいりません。しかも計画承認後の設備投資は支援措置で賄えるのです。
事務所内の効果はどうなのでしょう。「近田会計事務所における勤続年数と経営革新法承認件数の割合」(資料)をご覧ください。意外かもしれませんが、勤続1年から5年の職員が最も承認支援をしています。つまり経営革新支援は若手が頑張っているのです。ある若手職員がこんなことを言っていました。
「会計事務所に長くいると頭がかたくなる」過去計算と決算申告ばかりしていると思考の柔軟性が欠けてくるのかもしれません。ですから会計事務所の職員こそ、「経営革新」に取り組むべきなのです。過去計算だけでなく、関与先企業の未来を考え、いろいろな可能性を検討し、経営革新計画に盛り込むのです。
会計事務所が経営革新計画のお手伝いをしても、若い担当職員の文章は稚拙だし、新事業の説得性にも欠け、最初は窓口の担当者に相手にされないかもしれません。しかし何度計画の不備を指摘されても職員は食らいついていくものです。経営革新支援を通じて、会計事務所の職員も成長できます。承認支援にょって、関与先と会計事務所の双方が潤うことがおわかりいただけたでしょうか。
近田会計では関与先から承認支援の報酬を別段いただいておりません。その代わり、事務所から監査担当者には承認支援件数に応じてポイントを与え、昇給の際の重要査定項目にしています。今回、給与の高いベテラン職員ほど経営革新支援をしていないことがわかりましたので、ポイント制の導入で頑張っている若手職員がより報われる体制にし、職員への動機づけを考慮した次第です。
この先、何も手を打たなければ、関与先の半分近くは消滅してしまうのかもしれません。政府は早期の不良債権処理を金融機関に指導していますが、そのしわ寄せもあって地域の中小企業が倒産に追い込まれています。
八戸市でも従来型の業種の企業では採算が取れず、資金もショートして経営状態は深刻です。中小企業は現在、お互いの取り分を削りあうような体力の消耗戦を余儀なくされています。
厳しい経営環境の中で、中小企業と会計事務所が共に生き残りを図るためには、「経営革新」をするより他に活路はありません。社長と会計人が共に知恵を絞って、「経営革新」を推進するのです。
従来のやり方が通用しなくなっています。成功体験を持った経営者ほど危ういのです。老舗企業の倒産が増えていますが、老舗企業は業績がずっと良好だつたので、会社が傾いたときの対処法を知りません。税理士は黒字企業にも赤字企業にも精通しています。
私たちが「経営革新」を働きかけて、中小企業の次のジャンプのお手伝いをしなければなりません。関与先を守ることは会計事務所の職域を守ることにも繋がります。私は、全関与先を「経営革新」で生き残らせたいと考えています。
(構成/TKC出版 程田靖弘)
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