TKC 2005年4月号 No.387

FX2シリーズ10万社突破記念座談会 


■出席者(敬称略・順不同)
◇近田雄一(東北会)
 関与先企業数 501件
 FX2導入件数 364件
 自計化導入率 72・7%
◇秋山信愛(東北会)
 関与先企業数 377件
 FX2導入件数 302件
 自計化導入率 80・1%
◇坂本孝司(静岡会)
 関与先企業数 345件
 FX2導入件数 286件
 自計化導入率 82・9%
■司会
 FX2システム開発小委員会委員長 
 斎藤保幸(静岡会)


真の自計化を推進し中小企業の経営に会計を取り戻させる
昭和61年2月、飯田橋のフジボウ会館のTKC東京本社にいた飯塚社長の前に東芝のラップトップ・コンピュータ(1000)が置かれた。「このパソコンに企業向けの自計化システムを搭載したらどうだろうか」。このときの着想がFX2シリーズの開発に繋がり、その後多くの会員事務所による自計化推進活動によって、昨年11月には利用企業が10万社を突破した。第二次「成功の鍵作戦21」の最終年度にあたり、全国トップクラスの導入件数の3会員にお集まりいただき、10万社達成の意義や12万社達成に向けての抱負を問いた。
 FX2は我々のツールではなく経営者のための会計ツール
司会 ───昭和63年にFX1が開発されて、平成元年4月には消費税対応版のFX2が提供されました。そして昨年11月、FX2シリーズは10万社を突破しました。最終年度を迎えた第二次「成功の鍵作戦21」 でも、FX2シリーズ12万社達成の戦略目標が掲げられており、本日は皆さんから貴重なご意見を伺えればと思います。では、FX2自計化への取り組み姿勢からお願いします。
近田 青森県八戸市から来た近田です。日頃から中小企業が財務データをきちんと把握することは、関与先の経営に必ずプラスになることだと思ってFX2に取り組んでいます。
秋山 岩手県盛岡市から来た秋山です。今日は所長である父・秋山信勝に代わり参加させていただきました。FX2に関しては「自計化100%」という所長の方針に沿って取り組んでいます。
坂本
静岡県浜松市から来た坂本です。 FX2が登場したのは平成元年ですが、当事務所では平成4年になってようやく導入を始めました。事務所のモットーは一度やると決めたら巡回監査も書面添付もとことんやるというスタイルです。しかしFX2が登場した頃は「関与先からお金をもらって、関与先に入力させて、事務所は楽をして……」、そんなことは会計事務所としてで嘗ないと思いました。当初は自分自身が納得しないまま始めたのです。初年度に40件くらい導入したのですが、どこかに罪悪感がありました。
 そこで自計化の意義を見出そうと飯塚先生の著作を読み直し、「帳簿の証拠力」という言葉を見つけました。会計事務所が帳簿の入力代行をしてはいけないし、適時に記帳しなければ帳簿の証拠力も高まらない。でもそれだけでは関与先に自計化を納得させることはできないと思いました。それから『正規の簿記の諸原則』(飯塚毅著/森山書店)を読んで、本の中に出てくるレフソンというドイツの学者の文献を調べていたら「決算書の本質的目的とは」というくだりに出会ったのです。決算書の意義の一つは「証拠力」、もう一つは「自己報告機能」と書いてありました。商法上、決算書の作成義務がある理由は、配当可能利益の計算や債権者保護のためと言われていますが、商法では個人事業主にも決算を求めています。つまり決算書の報告村象の第一は経営者であり、経営者が決算書を確認することで破産防止機能が働くと言うのです。その本を読んで感動して、それからは「自分で数字を把握できない事業者は潰れます」と話せるようになりました。FX2は経営者に会計を取り戻すためのツールだと思っています。
 管理会計から財務会計という流れ、それがFX2の開発コンセプト
司会 ───先生方は中小企業における自計化のニーズをどのようにお考えですか。
近田 自計化のニーズはあると思いますが、黙っていたら何もないと思っています。関与先の間でも「パソコンを覚えたい」「コンピュータで財務処理をしたい」というニーズは結構あり、近田会計では関与先向けにパソコン教室を開いています。自計化はやはり事務所主導型で提案していくことが大切です。
秋山 市場でも廉価な会計ソフトが普及していますから「なぜFX2なのか」とお客様にきちんと説明することが必要です。「FX2であれば導入後は毎月会計のプロが訪問し、業績管理の指導を行います」という優位性を伝え、会計事務所側からニーズの掘り起こしをしないといけないと思います。
近田 FX2の良さは何といっても遡及訂正処理ができないことです。仕訳を過去に遡っていくらでも変えられたら、会計帳簿の真実性は確保されません。そのように説明した上で、「他社システムとTKCのFX2、どちらが良いですか?」とお客様に問いかけるのです。すると答えは断然「FX2」 です。
司会 ───飯塚社長のFX2の開発コンセプトは、「関与先企業にはリアルタイム経営に役立つ管理会計を、会計事務所には決算と税務申告に役立つ財務会計を、そしてTKCセンターには会計事務所をしっかり支えるホストシステムを作る」ということだったそうです。通常は財務会計から管理会計という発想ですが、FX2の場合は逆で、まず「会社の経営ありき」で、そこから「財務体質の強化を考える」という発想でFX2は開発されたのです。
坂本 FX2の月々のレンタル料も飯塚社長の着想ですね。あの当時、プログラムをレンタルするという考え方はなかった筈です。
近田 FX2が登場して、立ち上げ支援料やレンタル料が会計事務所に入ってきたことを考えると、10万社を突破した経済的効果も考えなくてはなりませんね。
 「とにかくやるんだ」所長の方針が決め手となる
司会 ───FX2導入にあたり、推進の決め手となった要因は何ですか?
秋山 所長の方針でした。3年前の事務所の自計化率は30%程度でした。しかし所長が「自計化100%達成」 の目標を打ち出してから一気に進みました。所長は電子申告を見据えて、自計化の延長線上には書面添付があり、それを最終的に電子申出口100%に繋げようと考えていました。そのときは具体的な施策や方法論というよりも 「とにかくやるんだ」という所長の思いが大きかったと思います。
近田 FX1が登場してすぐ消費税が導入されたので、消費税対応版のFX2を導入しなければと思い、規模の大きい関与先を集めて導入セミナーを開催しました。規模の大きいところはすぐ入るのですが小規模事業者はなかなか入りません。しかし岩手県の秋山先生がFX2に熱心に取り組んでいると聞いて、「知名度のある秋山会計が取り組んでいるのなら間違いない」と思い(笑)、近田会計も全関与先導入の方針を打ち出しました。
坂本 一昨年にFX2用巡回監査支援システムが登場したとき、所内で導入するかどうかの議論がありました。私は職員に向かって、「全部のお客様に書面添付をやろうと言ったときも、自計化を推進しようと言ったときも君たちの頭の中には『できない理由』 で一杯だったのではないか。しかし現在、3枚複写伝票のお客様を見て、どう思う? ぞっとしないか? あのとき所長の俺が君たちの意見に同意していたらどうなつていた?」。私はあえてそう言って、巡回監査支援システムの導入を決断したのです。
司会 ───FX2の推進には立ち上げ支援や導入後のフォローなど、職員にかなりの負担がかかりますね。仙職員への指導やインセンティブの課題はどう解決されましたか?
秋山 毎月開催される月例全体会議の前に、コンピュータに強い中堅職員を中心にして、自計化100%達成の推進会議を開催しています。導入当初は月1回、関与先向けの導入セミナーも行いました。盛岡センターの種市比登志センター長をはじめ、SCGの方にも関与先への同行訪問をしてもらいました。
 職員へは立ち上げ支援料の40%を褒賞手当てに充てていました。自計化100%のキャンペーンでは導入から3年間に限り、月々のレンタル科の半分を褒賞手当てにしました。
坂本 私のところもしばらくの間、立ち上げ支援料の半分を導入手当てと昇給に充てました。平成3年頃は中川巧先生 (静岡会) のFX2導入セミナーに職員全員で参加して、とても刺激を受けたのを覚えています。TKCのありがたいところは先に実践された先生が惜しみなく体験談を教えてくれることですね。
近田 近田会計で町立ち上げ支援科の3割を職員への褒賞手当てにしています。あと週休二日制が施行される前は、自計化導入に伴って休日手当てを設けたりしましたね。まだ職員一人ずつにパソコンが普及していなかった頃は、FX2導入5件につきパソコンを1台供給するという推奨策も行いました。
司会 ───関与先への提案方法として、参考になる事例はありますか
近田 TKC出版で発行している 『事務所通信』 の表紙を事務所オリジナル型で活用し、毎号関与先の自計化事例を紹介しているのです。地元で自計化企業が紹介されると 「あそこでやっているのなら、うちもやりたい」ということでかなり効果があります。自計化企業の宣伝にもなりますし、自計化の動機づけとしてはとても効果的です。
司会 ───秋山先生の事務所では 「自計化100%」の目標を掲げられているわけですが、FX2は規模の大きいところから順番に入り、小規模事業者のラインで入りづらくなりますね。
秋山 秋山会計では消費税の課税対象事業者とそうでない事業者を自計化導入の目安にしています。原則100%の目標ですが、課税対象事業者でも簡易課税の関与先は、導入の優先順位を下げる等の工夫をしています。
司会 ───小規模事業者に導入するツールとして開発された会計日記帳入力を活用した、電卓のいらないバウチャー方式も効果的ですね。
 真の自計化実現には導入後のフォローが欠かせない
司会 ───では、自計化後の事務所内の変化をお聞かせください。
秋山 翌月巡回監査率が向上しました。平成15年1月は79.3%だったのが、17年1月には87.2%になりました。秋山会計では一人あたりの担当件数はとても多くて、377社を14名で担当していますが、自計化によって業務効率が大幅に改善されました。従来は関与先を訪問するだけで手一杯でしたが、今後は業績管理やMAS業務にも目を配れるようになると思います。
近田 導入の際は職員に大変な手間がかかりますが、その業務が定着したときはすごい力となるのです。とにかく自計化によって巡回監査業務が画期的に軽減されます。
坂本 バランス・スコアカードには 「顧客の視点」がありますよね。お客様から見たらFX2で自計化を推進するTKC会計事務所の業務内容と、それ以外のやり方では、もう同じ会計事務所の仕事とは思えないのかもしれません。それくらい業務の内容に違いがあります。FX2の導入企業であれば、自社で入力管理をして、月一回会計の専門家がチェックに訪れ、しかも継続MAS等と連動させて経営助言や経営計画の策定支援も行ってくれます。職員にしても社長との接触時間が長くなり、作業工程や助言スキル等の仕事の質が全く違いますからね。
司会 ───会員の中にはFX2を入れたら自計化はそれで終わりと考えている先生方もいると思います。FX2のメリットは、導入後も会計の専門家が継続してフォローするところにあり、真の自計化はFX2を入れてから始まるのだと思いますが……。
近田 近田会計ではFX2のレンタル料を「トータルサポート料」とネーミングしています。私はパソコンが得意でないので時々画面がかたまってしまうことがあります。関与先でもそうしたトラブルが起こるかもしれないので、私の事務所では担当職員に携帯電話を持たせて24時間体制でサポートしています。実際に連絡が入ることはまずありませんが、社長は夜間や土日でも入力しますし、その都度数字を確認します。ですから自計化後も徹底したサポートが大切です。
坂本 導入時のサービスの提案の仕方にも工夫が必要ですよね。FX2にはいろいろな機能が搭載されていますが、導入時にあれもこれもと提案すると立ち上げ支援がとても大変なのです。実際にある職員は 「部門別管理も、資金繰り管理もできます」という薦め方で導入したので、立ち上げ時にかなり苦労しました。最初からフルコースでなく、1年目は月次試算表、2年目は部門別管理、3年目は資金繰り管理、こうしたスタンスでお客様の成長にあわせて新サービスを提供していけばいいのです。するとFX2のバリエーションも尽きることがありません。
司会 ───私の事務所でも立ち上げ時は、取引先登録や口座登録はお客様に敢えて人力させています。第一段階はそれでおしまい。次は口産別管理、手形管理、資金繰り管理と勧めていき、最終的に「社長ボタン」 にたどり着けばいいと思っています。また、関与先ごとで自計化の進捗状況も違いますからスケジュールを作って管理をしています。
秋山 うちの事務所でも最初は残高管理ができる段階までにしています。
司会 ───1昨年に提供開始されたFX2用巡回監査支援システムの活用状況はいかがですか。
坂本 斎藤先生の薦めもあり、実験的に事務所の監査データを巡回監査支援システムで処理してみました。開業以来の巡回監査のスタイルが確立されていたので、最初は使いづらいなと思いました。書面添付や自計化を始めたときも同じような戸惑いはありました。今ではすっかり業務に馴染んでいます。当事務所では 「巡回監査切り分けシステム」とネーミングして活用しているのです。開業時からの数年間の起帳代行業務が残っていた頃は、新人職員がお客様に代わって伝票を書き、そのようにして実務を覚えたものです。ところが現在は自計化ですから実務が覚えられません。そこで去年からベテラン職員が担当する規模の大きい関与先には、トレーニングのために若手職員を午前中に先発隊として行かせて証憑との突合をさせ、午後はベテラン職員が出向いて精査や助言をする。そのようにシステムを切り分けて活用しています。
 「12万社で良し」でなくもっと大きくいきましょう
司会 ───継続MASとの関連をどのようにお考えですか?
近田 FX2で業績管理ができるからこそ継続MASも活きてくるし、経営革新支援法の承認支援もできるのだと思います。自計化で業務が合理化された結果、経営計画や承認支援に時間が取れるようになりました。自計化企業の財務管理は関与先で行われるわけですから、それ以外の周辺サービスは会計事務所の仕事となるのは当然だと思います。経営計画や資金繰り交渉、承認支援等のお手伝いをすると企業側もとても喜んでくれますね。
坂本 自計化を行い、その周辺サービスをきちんとやっている事務所とそうでない事務所をひとくくりで税理士業と呼べない時代になりましたね
近田 新規のお客様などは、従来通りの会計事務所のイメージで関与を依頼に来るわけです。すると 「顧問料はいくらですか?」と聞かれます。そうではなくて 「近田会計は何ができるのですか?」と聞いて欲しいのです。帳簿作成と決算申告だけをお願いしたいというニーズであれば他にお願いすればいい。そうでなくて毎月監査と経営助言をしっかり行い、銀行交渉や保険のケアまでする事務所であれば「いくら?」ではなく、「何をしてくれるのですか?」となる筈です。
司会 ───関与先の黒字化に果たすFX2の役割についてはどのように考えますか。
坂本 自計化したから関与先が良くなった。あるいは自計化企業の金融機関の評価があがったという事例はたくさんありますが、本当のところはわかりません。というのも声なき声を声にするという組織的活動をしない限り、個々の事例だけを見ても客観的評価は見えてこないからです。記帳代行型の会計事務所とFX2や継続MASを駆使したサービスを提供している会計事務所との比較をきちんとしないと、真の自計化の意義は検証されないと思います。しかし自計化はもう確実に時代のニーズですし、FX2や継続MASを提供していれば経営者も満足してくれます。お客様が絶村離れないのは事実ですね
近田 お客様が浮気をする場合がありますよね。近田会計でも3件ばかりよそに行かれたのですが、結局戻ってこられました。よその事務所ほ半年間何の接触もせずに顧問料だけを徴収していたそうです。近田会計は毎月必ず行っていろいろなお世話をしていたのですから、やっぱり浮気してみないとわからないということです (笑)。
 私は自計化すれば黒字になるのは当然だと思っています。自計化すると経営者の意識が変わるからです。今までは会社が儲かっているのかいないのか、それすら丼勘定でわかっていませんでした。しかしFX2なら月単位でわかります。会社が傾いても数字を見ていれば対策も立てられる。自社で計数管理がきちんとできていれば銀行の担当者に聞かれても社長は自分で答えられます。
司会 右肩下がりの時代ですから経営者が自社の数字を掴んでいなくては舵取りはできません。その数字の読み方を教えるのは誰か。それは私たちということですね。
坂本 FX2を導入すると社長に数字をごまかすという意識がなくなります。自社の数字を自分で人力して、自分で管理するわけですから意識が高くなります。会計事務所が入力するとやはり他人の数字なんですね。数字がわかることで、会社は強靭な足腰を持てるようになります。ただし体質強化=即黒字化ではありません。租利をこれだけ確保できれば利益がでるといった事業の目安はつきますが、財務体質の強化はあくまでも黒字化の間接要因であり、黒字化を考えるのは社長の仕事なのです。
司会
(斎藤)
───第二次「成功の鍵作戦21」が最終年度を迎えました。FX2シリーズ12万社達成という戦略目標があります。最後に全国会目標達成に向け、全国の会員に熱いメッセージをお願いします。
秋山 FX2は事務所・関与先双方が発展するためのツールです。「自利利他」の精神で、今後も中小企業の発展のために積極的に取り組んでいきたいと思います。
近田 税理士が中小企業をだめにしたと思うのです。自社の利益も借入金の額もわからず、融資のための決算書も仮払いの明細も、みんな会計事務所に頼みに来ます。それが中小企業の現状です。会計事務所が社長から会計を取りあげたような気がしてなりません。それを改善するツールがFX2です。自計化で経営者が自社の財務状態を把握できるようにする。FX2をどんどん入れて、中小企業の社長に成長していただく。それによって会計事務所の職員も成長できます。記帳代行ばかりしていると頭がかたくなって、銀行交渉や経営革新支援もできなくなります。みんなでやりましょう。そうしないとこの先、日本経済が持ちません。12万社ではまだ足りない。目標を立てるなら50万社でいきましょう。
坂本 TKC会員が9200名となり、関与先企業は75万社になりました。飯塚先生がご健在でしたら「12万社? 何を考えとるか。50万社でいきなさい」と言った筈です。会計事務所という職業がこの世の中に登場したのはせいぜい200年くらい前です。それまで商人は自分で帳簿をつけていたわけです。それを会計事務所が丸ごと請け負って、結果として社長に財務など考えなくてもいいとしてしまった。FX2でもう一度もとに戻してあげなくてはなりません。それをするのが善意ある職業会計人のあり方だと思います。
(構成/TKC出版 程田靖弘)